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【実例で学ぶ】茅ヶ崎の築40年空き家が、年間収支-20万円から+96万円に変わるまで

「相続したはいいものの、どうすればいいか分からない…」
湘南エリアに空き家を所有する多くの方が、同様の悩みを抱えています。

この記事では、実際に茅ヶ崎市にあった築40年の空き家が、どのようにして年間20万円の赤字を生む「負債」から、年間96万円の収入を生む「資産」へと生まれ変わったのか、そのプロセスを具体的な事例研究(ケーススタディ)として分析します。

ケース概要:物件情報と当初の課題

まずは、この事例の出発点を見ていきましょう。

物件情報

  • 所在地: 神奈川県茅ヶ崎市(駅から徒歩圏内)
  • 築年数: 40年
  • 構造: 木造戸建て
  • 当初の状況: 所有者は都内在住。相続後1年間、ほぼ空き家の状態で、管理は年に数回の草むしりと換気のみ。

所有者が直面していた課題

  • 経済的負担: 年間約20万円にのぼる固定資産税と、火災保険料などの維持費。
  • 管理的負担: 都内から茅ヶ崎までの往復交通費と、管理作業に丸一日かかる時間的・身体的負担。
  • 法的リスク: このまま放置した場合、自治体から「管理不全空き家」に認定され、固定資産税が最大6倍になる可能性があることへの強い不安。

戦略立案:情報収集と3つの選択肢の比較

所有者は、まずインターネットや自治体のウェブサイトで、空き家に関する法改正や活用方法についての情報収集を徹底的に実施。その知識を基に、自身の状況に合わせて3つの選択肢を比較検討しました。

1. 現状のまま売却

  • メリット: すぐに現金化でき、管理の手間や税金の負担から完全に解放される。
  • デメリット: 築40年で内装も傷んでいるため、土地値からさらに解体費用分を差し引かれた、非常に安い価格での売却になる可能性が高い。親の思い出が詰まった家を手放すことへの抵抗感。

2. 解体して更地で売却

  • メリット: 土地として高く売れる可能性がある。買主が新築プランを立てやすい。
  • デメリット: 数百万円の解体費用を自己負担する必要がある。解体後は固定資産税の優遇がなくなり、税額が跳ね上がるリスク。

3. リフォームして賃貸

  • メリット: 家を残しつつ、継続的な家賃収入を得られる可能性がある。
  • デメリット: リフォームに初期投資が必要。賃貸管理の手間や、空室になるリスクがある。

【意思決定】
所有者は、物件の「駅から徒歩圏内」という最大の強みを活かすため、そして家を残したいという想いから、リスクを承知の上で「リフォームして賃貸」戦略を選択しました。

具体的な施策:補助金活用とコンセプト・リフォーム

戦略は決まりましたが、課題はリフォーム費用です。

  • 資金計画:
    オンラインで得た情報を元に、所有者自身が茅ヶ崎市のウェブサイトを調査。「空き家活用に関する補助金」の存在を知り、市の担当窓口に直接相談。結果、リフォーム費用の一部を補助金で賄える目処を立てることに成功しました。
  • コンセプト設計:
    地域の賃貸情報サイトに掲載されている他の人気物件を研究し、「都心からの移住者で、湘南らしい暮らしを求めるアクティブな層」を明確なターゲットに設定。コンセプトを「サーフィンとリモートワークを両立する、海近のセカンドベース」と定めました。
  • 実行したリフォーム内容:
    • 壁で仕切られていたダイニングキッチンと和室を一体化し、開放的なLDKへ間取りを変更。
    • 玄関スペースを拡張し、サーフボードや自転車も気兼ねなく置ける土間スペースを新設。
    • 古かったタイル張りの浴室やトイレ、キッチンを、清潔感のある最新の設備に全面的に刷新。
    • 高速インターネット回線を導入し、リモートワークに対応できる環境を整備。

結果:収支改善とマッチングの成功

  • 入居者募集:
    所有者自身が、複数の不動産情報サイトに加え、個人間で直接やりとりができるマッチングサイトにも物件情報を掲載。「週末はサーフィン三昧、平日は静かにリモートワーク。そんな暮らしを実現しませんか?」といった、コンセプトに基づいた魅力的な紹介文と、リフォーム後の美しい写真を添えました。
  • マッチング:
    募集開始後、ターゲットとしていた通りの「都内在住でリモートワーク中心の30代夫婦」からサイト経由で直接連絡が入りました。内見でリフォーム後の空間とコンセプトを気に入ってもらい、スムーズに契約が成立しました。

収支の劇的改善(Before/After)

Before:

  • 年間収支 約-20万円(固定資産税・維持費)

After:

  • リフォーム費用:300万円
  • 茅ヶ崎市の補助金:-50万円
  • 所有者の自己負担額:250万円
  • 家賃収入:月8万円(年間96万円)

年間20万円の赤字を垂れ流していた「負債」は、管理費などを差し引いても安定した収益を生み出す「資産」へと生まれ変わりました。リフォームにかかった自己負担額も、3年弱の家賃収入で十分に回収できる見込みです。

まとめ:この事例から学べる3つのポイント

この成功事例から、空き家問題に悩む私たちが学ぶべき点は3つあります。

  1. 正しい情報収集が戦略の質を決める:
    所有者はまず、リスク(税金増額)とチャンス(補助金制度)の両方を自ら学びました。この客観的な情報が、感情に流されない最適な意思決定の土台となりました。
  2. 物件の「強み」に集中する:
    「築年数が古い」という弱みにとらわれるのではなく、「茅ヶ崎の駅から歩ける」という最大の強みに焦点を当て、その価値を最大化する戦略(コンセプト・リフォーム)を立てたことが成功の鍵でした。
  3. プラットフォームを賢く使う:
    不動産会社に丸投げするだけでなく、所有者自身が想いを伝えられるマッチングサイトのような場を積極的に活用したことで、物件のコンセプトに心から共感してくれる、理想の入居者と出会うことができました。

この記事で紹介したような課題整理や戦略立案について、ご自身のケースで専門的なアドバイスが必要な場合は、湘南空き家バンクのお問い合わせまでご連絡ください