- コラム
不動産屋に「売れない」と言われた家、本当の理由は何?湘南の空き家売却・5つの壁と突破口
「この物件は、うちではちょっと扱えませんね…」
不動産会社にそう言われ、湘南にある大切な家の売却を諦めかけていませんか? 時間だけが過ぎていき、管理の手間と固定資産税の負担だけが重くのしかかる。そんな状況に、焦りや無力感を覚えている方も少なくないでしょう。
しかし、諦めるのはまだ早いかもしれません。「売れない」と言われたのには、必ず理由があります。そして、その理由がわかれば、打つべき手も見えてきます。
この記事は、売却活動がうまくいかずに悩んでいるあなたのための「診断ツール」です。あなたの空き家が直面している「5つの壁」を特定し、それを乗り越えるための具体的な「突破口」を一緒に探していきましょう。
壁1:建物が古い・状態が悪い
不動産屋から売却を断られる最も一般的な理由が、建物の老朽化です。特に1981年以前の旧耐震基準で建てられた家は、買い手から敬遠されがちです。また、長年放置され、庭の雑草が伸び放題だったり、室内にカビが発生していたりすると、内見時の印象が悪く、買い手がつく可能性は著しく低くなります。
- □ 築年数が40年を超えている
- □ 1981年以前の旧耐震基準で建てられた
- □ 雨漏りや壁のひび割れなど、目に見える傷みがある
- □ 庭の手入れが長年されておらず、雑草が生い茂っている
【突破口】価値を「上げる」か、視点を「変える」
1. 自治体の補助金で価値を上げる
「リフォームする資金がない」と諦める前に、自治体の手厚い補助金制度を調べてみましょう。湘南エリアには、空き家の価値向上を支援する制度が豊富にあります。
- 藤沢市「空家利活用事業補助金」: 空き家を地域貢献施設などとして改修する場合、費用の3分の2、最大100万円が補助されます。
- 二宮町「空き家リフォーム補助事業」: 空き家バンク登録物件のリフォームに対し、費用の2分の1、最大50万円が補助されます。
これらの制度を活用すれば、少ない自己負担で物件を魅力的に生まれ変わらせることが可能です。
2. 「リノベーション素材」としてアピールする
発想を転換し、「古さ」を「味」として捉えてくれる買い手を探すのも有効な戦略です。近年、新築にはない趣のある古民家や昭和レトロな平屋を、自分好みに改装したいという需要が高まっています。このような特定の層に向けて、「リノベーションのベース物件」として売り出すことで、新たな買い手が見つかる可能性があります。
壁2:法律上の問題がある
見た目は問題なくても、法律上の制約が売却の大きな障壁になっているケースがあります。特に多いのが、建築基準法で定められた「接道義務」を満たしておらず、再建築ができない物件です。また、箱根エリアなどでは、自然公園法や景観条例によって建て替えや増改築が厳しく制限されている場合もあります。
- □ 敷地が幅4m以上の道路に2m以上接していない(再建築不可)
- □ 市街化調整区域にあり、原則として建物の建築ができない
- □ 地域の条例などで、建て替えやリフォームに制限がある
【突破口】「訳あり物件」のプロに相談する
このような法的な制約がある物件は、一般の買い手を見つけるのが非常に困難です。住宅ローンが組めないケースも多く、通常の不動産仲介ではまず売れません。
ここで頼りになるのが、専門の「買取業者」です。買取業者は、不動産を事業として評価します。一般市場では売れない物件でも、リフォームして再販したり、隣地と合わせて活用したりと、プロならではのノウハウで価値を見出し、直接買い取ってくれます。
買取のメリット・デメリット
メリット:
- スピードが早い: 最短数日で現金化が可能。
- 現状のまま売れる: リフォームや清掃は不要。
- 契約不適合責任が免除: 売却後のトラブルの心配がない。
デメリット:
- 価格が安くなる: 仲介で売る場合に比べ、価格は市場の7〜8割程度になるのが一般的です。
価格よりも、確実性とスピードを重視するなら、買取は非常に有効な選択肢です。
壁3:家財道具が多すぎる
相続した実家に、前の居住者の家財道具がそのまま残っているケースは少なくありません。これが売却の大きな足かせになります。荷物で溢れた家は内見者に悪い印象を与え、購入意欲を削いでしまいます。また、いざ売却が決まっても、大量の家財道具の処分には多額の費用と手間がかかり、所有者にとって大きな負担となります。
- □ 亡くなった親の荷物が手付かずのまま残っている
- □ 部屋が物で溢れており、内見できる状態ではない
- □ 仏壇や大型家具など、処分が難しいものがある
【突破口】自治体の「片付け補助金」を活用する
「片付け費用がないから」と放置する前に、自治体の支援制度を探してみましょう。空き家の片付けを支援するユニークな補助金を用意している自治体があります。
- 箱根町「定住促進空き家家財道具等処分交付金交付制度」: 空き家バンク登録物件の売却や賃貸のために家財道具を処分する費用に対し、費用の2分の1(上限10万円)を補助してくれます。
こうした制度を利用して家の中をすっきりと片付ければ、内見の申し込みも増え、売却のチャンスが大きく広がります。
壁4:不動産会社が積極的に動いてくれない
不動産会社に売却を依頼したものの、一向に内見の連絡が来ない。広告も出してくれている様子がない…。それは、あなたの物件が後回しにされているサインかもしれません。不動産会社にとって、低価格の古い物件は手間がかかる割に仲介手数料が安く、ビジネスとしての優先順位が低くなりがちです。
- □ 売却を依頼してから数ヶ月、何の進展もない
- □ 担当者からの連絡がほとんどない
- □ 物件の広告や販売活動をしている形跡が見られない
【突破口】不動産会社を介さない「新しい市場」へ
従来の不動産流通の仕組みでは光が当たらなかった物件にこそ、チャンスがあるのが「湘南空き家バンク」のような、所有者と購入希望者が直接つながるプラットフォームです。
「湘南空き家バンク」活用のメリット
- どんな物件でも掲載可能: 不動産会社が敬遠するような物件でも、あなたの言葉で魅力を伝え、買いたい人を探せます。
- 仲介手数料を節約: 直接交渉なので、高額な仲介手数料を抑えることができます。
- 家の「物語」を伝えられる: 「この家でこんな暮らしをしてきた」「この庭の木が自慢だった」など、データだけでは伝わらない家の価値を、次の住み手に直接届けられます。
個人間取引の不安も、運営者が司法書士であるため、法的なサポートを受けながら安心して進められます。不動産会社に任せきりにするのではなく、自ら買い手を探すという選択肢が、状況を打開する鍵になるかもしれません。
壁5:買い手の需要と合っていない
駅から遠い、坂の上にある、周辺に商業施設がないなど、一般的な「住みやすさ」の基準では評価されにくい物件も売れ残りがちです。多くの人が求める条件から外れているため、居住用の家を探している層には響きにくいのです。
- □ 最寄り駅から徒歩20分以上かかる
- □ 周辺にスーパーやコンビニがない
- □ 地域の人口が減少傾向にある
【突破口】「住む」以外の可能性を探る
「家=住む場所」という固定観念を一度捨ててみましょう。あなたの家は、全く違う価値を秘めているかもしれません。
店舗やアトリエとして: 湘南エリアの古民家は、その雰囲気を活かしてカフェやレストラン、アーティストのアトリエとして活用される事例が増えています。
サテライトオフィスやコワーキングスペースとして: 働き方が多様化し、都心から離れた場所で仕事をする人が増えています。
このような商業利用の可能性を探る際も、自治体の支援が力になります。例えば小田原市では、空き店舗を貸し出すための改修費用に対し、費用の3分の2(最大100万円)を補助する制度があります。ターゲットを「住みたい人」から「事業をしたい人」に切り替えることで、思わぬ買い手が見つかる可能性があります。
まとめ:諦める前に、もう一度だけ立ち止まろう
「売れない」と一言で片付けてしまうのは簡単です。しかし、その裏には必ず具体的な原因があります。そして、その原因一つひとつに、今回ご紹介したような突破口が存在します。
あなたの湘南の家は、決して価値がないわけではありません。ただ、その価値を適切な相手に、適切な方法で届けられていないだけなのかもしれません。
この記事を参考に、ご自身の空き家がどの「壁」に直面しているのかを診断し、新しい一歩を踏み出してみてください。そして、もし道に迷ったら、一人で悩まずに自治体の相談窓口や、「湘南空き家バンク」のような新しいプラットフォームの扉を叩いてみてください。きっと、あなたの家の未来を拓くヒントが見つかるはずです。