- コラム
湘南・箱根・西湘エリアの空き家、このまま放置すると年間いくら損する?維持費用とリスクの完全ガイド
湘南・箱根・西湘エリアにお住まいの皆さん、相続した実家や使わなくなった空き家を「そのうち何とかしよう」と放置していませんか?「まだ住める状態だし、急いで対処する必要はない」と思われるかもしれませんが、実は空き家を放置することで、想像以上の費用負担とリスクを抱えている可能性があります。
この記事では、湘南エリア(藤沢市・茅ヶ崎市・鎌倉市・大磯町・二宮町・平塚市)から小田原・箱根エリア(小田原市・箱根町・真鶴町・湯河原町)、西湘エリア(南足柄市・開成町・大井町・松田町・中井町・山北町)まで、県西部の空き家を放置した場合の年間維持費用を詳しく解説し、さらに2023年の法改正で大幅に変わったペナルティについてもご紹介します。「現状維持」が実は一番高コストな選択肢かもしれません。
湘南・箱根・西湘エリアの空き家放置で年間いくらかかる?具体的な費用内訳
1. 固定資産税・都市計画税:年間10万~35万円
湘南・箱根・西湘エリアは立地により固定資産税評価額に大きな差がありますが、全国平均と比べて高水準のエリアが多いのが特徴です。
エリア別固定資産税評価額の目安(2024年データ)
- 湘南エリア(海岸部・中心市街地)
鎌倉市:平均54.1万円/坪(固定資産税約7,600円/坪)
藤沢市:平均51.5万円/坪(固定資産税約7,200円/坪)
茅ヶ崎市:平均51.9万円/坪(固定資産税約7,300円/坪)
平塚市:平均35万~45万円/坪(固定資産税約5,000~6,300円/坪) - 小田原・箱根エリア
小田原市:平均23.9万円/坪(固定資産税約3,300円/坪)
箱根町:平均20万~40万円/坪(観光地は高額)
湯河原町:平均25万~35万円/坪
真鶴町:平均20万~30万円/坪 - 西湘・県西エリア
大磯町・二宮町:平均25万~35万円/坪
南足柄市・開成町・大井町・松田町・中井町・山北町:平均15万~25万円/坪
30坪住宅での年間税負担例:
- 湘南海岸部:固定資産税・都市計画税合計で年間約25万~30万円
- 小田原・箱根:年間約15万~25万円
- 西湘・県西部:年間約10万~20万円
しかも、これは現在住宅用地特例(固定資産税が6分の1に減額)が適用されている金額です。後述する「特定空き家」や「管理不全空き家」に指定されると、この特例が外れて最大6倍になる可能性があります。
2. 火災保険・地震保険:年間3万~8万円
空き家でも火災や自然災害のリスクは変わりません。むしろ、定期的な点検ができない分、リスクは高まります。
- 火災保険:年間3万~5万円
- 地震保険:年間1万~3万円
特に箱根町・湯河原町の山間部や、湘南海岸部は自然災害リスクが高く、保険料も相場より高めに設定されることが多いです。
3. 水道光熱費(基本料金):年間3万~5万円
完全に電気・水道を止めてしまうと、定期的な換気や掃除ができなくなり、建物の劣化が加速します。そのため最低限の契約は維持する必要があります。
- 電気代基本料金:月額約1,500円
- 水道基本料金:月額約1,000円
年間合計:約3万円
山北町や松田町などの山間部では、冬季の凍結防止対策で追加費用がかかる場合もあります。
4. 定期管理・メンテナンス費用:年間10万~25万円
空き家を適切な状態で維持するには、定期的な管理が欠かせません。エリアによって必要な管理内容が異なります。
共通の管理費用
- 草刈り・庭の手入れ:年2~3回で5万~10万円
- 建物の点検・清掃:年4回で3万~5万円
- 簡易修繕(雨漏り対応など):年間2万~5万円
エリア別特有の管理費用
- 湘南海岸部(藤沢市・茅ヶ崎市・大磯町など):塩害対策で年間3万~5万円追加
- 箱根・湯河原の温泉地:硫黄による金属腐食対策で年間2万~4万円追加
- 山間部(山北町・松田町・中井町など):害獣対策・落葉処理で年間3万~8万円追加
交通費も忘れてはいけません。エリア外在住の方は:
- 都内から湘南エリア:年間5万~8万円
- 都内から箱根・小田原エリア:年間8万~12万円
- 都内から西湘・県西エリア:年間10万~15万円
5. 緊急修繕費用:年間平均10万~50万円
築年数が経過した空き家では、予期せぬ修繕が必要になることがあります。エリア特性により修繕内容も異なります。
共通修繕項目
- 屋根・外壁の修繕:10万~50万円
- 配管の交換:5万~30万円
- 害虫駆除・シロアリ対策:5万~15万円
エリア別特有の修繕
- 湘南海岸部:塩害による金属部分の腐食修理(年間5万~15万円)
- 箱根・湯河原:温泉成分による配管・設備劣化(年間10万~20万円)
- 山間部:イノシシ・シカなどによる建物損傷修理(年間5万~10万円)
これらは毎年発生するわけではありませんが、5~10年に一度は大きな修繕が必要になると考えておくべきです。
エリア別年間維持費用の総額
上記を合計すると、各エリアの空き家を適切に維持するための年間費用は:
- 湘南海岸部(藤沢市・茅ヶ崎市・鎌倉市・平塚市・大磯町・二宮町)
最低限の維持:約70万円
適切な管理を行う場合:約120万円
修繕も含めた場合:約150万円 - 小田原・箱根エリア(小田原市・箱根町・真鶴町・湯河原町)
最低限の維持:約55万円
適切な管理を行う場合:約95万円
修繕も含めた場合:約130万円 - 西湘・県西エリア(南足柄市・開成町・大井町・松田町・中井町・山北町)
最低限の維持:約45万円
適切な管理を行う場合:約75万円
修繕も含めた場合:約110万円
10年間放置すると、500万~1,500万円もの費用がかかる計算になります。
2023年法改正で激変!「放置リスク」が大幅拡大
「管理不全空き家」で固定資産税が最大6倍に
2023年12月の空き家対策特別措置法の改正により、これまで「特定空き家」のみが対象だった固定資産税の増額措置が、新たに「管理不全空き家」にも適用されることになりました。
管理不全空き家の定義:
- 窓ガラスの破損や外壁の剥落など、適切な管理が行われていない
- 雑草が繁茂し、近隣に迷惑をかけている
- 今後放置すれば特定空き家になるおそれがある
つまり、完全に朽廃する前の段階でも、税制上のペナルティを受ける可能性が高まったのです。
エリア別固定資産税6倍のインパクト
- 湘南海岸部30坪住宅の場合:
現在:年間約25万円 → 6倍後:年間約150万円(増加額:125万円) - 小田原・箱根エリア30坪住宅の場合:
現在:年間約20万円 → 6倍後:年間約120万円(増加額:100万円) - 西湘・県西エリア30坪住宅の場合:
現在:年間約15万円 → 6倍後:年間約90万円(増加額:75万円)
これまでの維持費用に加えて、さらに年間75万~125万円の負担増となり、総額で年間150万~275万円の費用負担になる可能性があります。
過料50万円以下の罰則も
行政からの指導や勧告に従わない場合、50万円以下の過料が科される可能性もあります。
エリア特有のリスク要因
- 湘南海岸エリア(藤沢市・茅ヶ崎市・平塚市・大磯町・二宮町)
塩害による金属部分の腐食加速
台風・高潮リスクによる被害拡大
観光地としての景観への責任 - 箱根・小田原エリア(小田原市・箱根町・真鶴町・湯河原町)
温泉成分による配管・設備の劣化加速
観光地としての管理水準への要求
急傾斜地での災害リスク - 西湘・県西エリア(南足柄市・開成町・大井町・松田町・中井町・山北町)
野生動物(イノシシ・シカ・サル)による建物損傷
山間部での冬季凍結による配管破損
過疎化による管理業者の確保困難
損失を最小化する3つの選択肢
1. 早期売却で損失を断ち切る
年間50万~150万円を超える維持費用を考えると、たとえ相場より安くても早期売却が最も経済的な選択肢になることがあります。
エリア別売却のメリット:
- 湘南海岸部:需要が高く、短期間での売却が可能
- 箱根・小田原:別荘需要や温泉地ブランドで付加価値あり
- 西湘・県西部:自然環境重視の移住者需要が増加
2. 賃貸活用で収益化
立地条件が良い物件であれば、リノベーション後の賃貸活用も検討できます。
エリア別賃貸需要:
- 藤沢市・茅ヶ崎市:都心通勤者の高い需要
- 小田原市:新幹線アクセスの良さで需要安定
- 箱根・湯河原:民泊・別荘賃貸の可能性
- 西湘部:自然志向の移住者向け需要
3. 適切な管理の継続
売却も賃貸も難しい場合は、最低限でも適切な管理を継続し、「管理不全空き家」指定を避けることが重要です。
解体という選択肢の検討
エリア別解体費用の相場(2024年データ)
- 湘南海岸部:
木造住宅:3.5万~3.8万円/坪
鉄骨造住宅:4.2万~4.6万円/坪 - 小田原・箱根エリア:
木造住宅:3.3万~3.6万円/坪
鉄骨造住宅:4.0万~4.4万円/坪 - 西湘・県西エリア:
木造住宅:3.0万~3.5万円/坪
鉄骨造住宅:3.8万~4.2万円/坪
30坪木造住宅の解体費用:90万~115万円
まとめ:「現状維持」が最もコストの高い選択肢
湘南・箱根・西湘エリアの空き家を放置することで発生する年間費用は45万~150万円、さらに2023年の法改正により固定資産税が6倍になるリスクも加わりました。10年間で総額500万~1,500万円を超える負担になる可能性もあります。
藤沢市・茅ヶ崎市・鎌倉市・平塚市・大磯町・二宮町の海岸部から、小田原市・箱根町・真鶴町・湯河原町の温泉・観光エリア、南足柄市・開成町・大井町・松田町・中井町・山北町の自然豊かな県西部まで、それぞれ異なる特性とリスクがありますが、共通して言えることは「とりあえず現状維持」が実は最もコストの高い選択肢だということです。
早期に専門家に相談し、売却・賃貸・適切な管理・解体など、あなたの状況に最適な解決策を見つけることが、長期的な損失を最小化する最善の方法です。
湘南空き家バンクでは、県西部全域の空き家のお悩みについて専門家がサポートいたします。まずはお気軽にご相談ください。一日も早い対処が、あなたの大切な資産を守ることにつながります。