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【データで見る】湘南・県西エリアの空き家問題|市町別の特徴と賢い解決策

「親から譲り受けた家が小田原市にあるが、将来どうすれば…」
「茅ヶ崎市に所有する家の管理が、年々負担になっている…」

豊かな自然と独自の文化が魅力の湘南・県西エリア。その一方で、人口構造の変化などから「空き家」が深刻な問題となっていることをご存知でしょうか。

この記事では、総務省の最新データ(※)を基に、藤沢市から山北町に至るまで、各市町のリアルな空き家事情と、その地域特性を最大限に活かした「賢い空き家活用法」を、不動産のプロの視点から徹底解説します。

(※)データは主に総務省統計局「平成30年住宅・土地統計調査」を基にしています。自治体により独自の最新調査データが存在する場合もあります。

【湘南・県西エリア】市町別の特徴と空き家の現状

あなたの空き家がある街は、どんな特徴と課題を抱えているのでしょうか。具体的なデータと共に見ていきましょう。

◆ 湘南エリア(沿岸部)

茅ヶ崎市:カルチャーと自然が融合する街

  • 特徴: サザンビーチやえぼし岩が象徴的な、サーフィンをはじめとする独自のカルチャーが根付く街。都心へのアクセスも良く、移住者にも絶大な人気を誇ります。
  • 空き家の現状: 空き家数は約12,910戸、空き家率は12.2%。特に賃貸用の空き家が多い傾向にありますが、活発な人の流れを背景に、適切なリフォームや活用法次第で高需要の物件に生まれ変わる可能性を秘めています。

藤沢市:多様な魅力を持つ湘南の中心都市

  • 特徴: 江の島や鵠沼海岸といった観光地から、商業施設が充実した藤沢駅周辺、静かな住宅街まで多様な顔を持ちます。交通の便も良く、あらゆる世代にとって暮らしやすい環境です。
  • 空き家の現状: 空き家数は県内でも特に多く約26,380戸、空き家率は12.7%。都市部ならではの課題ですが、学生からファミリー、シニア層まで幅広い賃貸・売買ニーズが存在します。

平塚市:商業・工業が盛んな活気ある街

  • 特徴: 湘南エリア有数の商業都市であり、大型商業施設や工業地帯が集積。毎年多くの人で賑わう「湘南ひらつか七夕まつり」でも知られます。
  • 空き家の現状: 空き家数は約16,040戸、空き家率は13.5%。アクセスの良さから住宅需要は安定しており、放置されている物件は「宝の持ち腐れ」になっている可能性が高いエリアです。

大磯町・二宮町:歴史と風情、穏やかな暮らし

  • 特徴: 旧吉田茂邸など歴史的邸宅が残り、落ち着いた雰囲気が漂う大磯町。海と丘陵に囲まれ、ゆったりとした時間が流れる二宮町。共にスローライフを求める層に人気です。
  • 空き家の現状: 大磯町の空き家率は19.5%、二宮町は16.2%と、エリア内では比較的高めです。別荘として使われた後に空き家となった物件も多く、セカンドハウスや移住希望者へのマッチングが有効な解決策となります。

◆ 県西エリア(小田原・足柄地域)

小田原市:歴史と交通の要衝

  • 特徴: 小田原城を中心とした城下町の歴史と、新幹線も停車する交通の利便性を兼ね備えた県西地域の中核都市。豊かな食文化も魅力です。
  • 空き家の現状: 空き家数は約14,240戸、空き家率は15.9%。歴史的な街並みに惹かれる移住者や、商業利用(古民家カフェ、店舗など)の需要も高く、活用ポテンシャルの高いエリアです。

箱根町・湯河原町・真鶴町:日本有数の温泉・観光地

  • 特徴:言わずと知れた国際的観光地の箱根町、万葉集にも詠われた名湯の地・湯河原町、美しい海岸線とアートが息づく真鶴町。非日常を求める人々を惹きつけます。
  • 空き家の現状: 空き家率が非常に高く、箱根町で41.1%、湯河原町で30.3%、真鶴町で27.0%にものぼります。これは別荘としての利用が多いことを示していますが、近年は利用されなくなった物件が増加。インバウンド需要も見据えた宿泊施設へのリノベーションや、企業のサテライトオフィスとしての活用が期待されます。

南足柄市・足柄上郡(開成町・大井町・松田町・中井町・山北町):豊かな自然と里山の恵み

  • 特徴: 富士山や丹沢山系を望む、水と緑の豊かなエリア。南足柄市の天狗伝説、開成町のあじさい、松田町のハーブ、山北町の鉄道遺産やキャンプ場など、個性豊かな魅力が点在します。
  • 空き家の現状: 山北町(30.1%)や中井町(18.5%)などで高い空き家率が見られます。これらのエリアでは、自然志向の暮らしを求めるファミリーへの戸建て賃貸や、農業体験ができる古民家、創作活動の拠点となるアトリエなど、都市部にはないユニークな活用法が成功の鍵となります。

なぜ放置はNG?空き家がもたらす共通のリスク

どの市町であっても、空き家を放置すれば、固定資産税の増額リスク、建物の劣化、倒壊や火災といった周辺への危害など、深刻な問題に繋がりかねません。大切なのは、地域の特性を理解し、適切なタイミングで一歩を踏み出すことです。

さいごに

湘南・県西エリアとひと口に言っても、本当に色々な顔がありますよね。

にぎやかな茅ヶ崎市や藤沢市、城下町の風情が素敵な小田原市、温泉でほっと一息つける箱根町や湯河原町、そして緑の匂いが気持ちいい山北町や南足柄市。

皆さんがお持ちの空き家も、きっとそんな素敵な街のどこかにあるのだと思います。そこには、家族で過ごした夏休みや、誰かが大切に手入れした庭など、たくさんの思い出が詰まっているのではないでしょうか。

誰も住まなくなると、家は少しずつ元気がなくなって、街にとってもちょっぴり寂しい景色になってしまうかもしれません。

でも、ほんの少し視点を変えてみませんか?

その家は、新しい誰かの「宝物」になる可能性を秘めています。 「湘南でサーフィンを始めたい!」という若者や、「静かな場所で作品作りに集中したい」というアーティスト、「自然の中で子どもを育てたい」というご家族。あなたの家が、そんな誰かの夢を叶える場所になるかもしれないんです。

「うちの家も、もしかしたら…?」

この記事を読んで、そんな風にご自身の空き家のことを少しでも身近に感じていただけたら、とても嬉しいです。大切な家を、そして素敵な街を未来につないでいく。そのためのヒントが、この記事の中に一つでも見つかっていれば幸いです。