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湘南の空き家、隣人に木の枝を切られても文句は言えない?【2025年最新】民法改正とご近所トラブル回避術

「藤沢に相続した実家、庭木が伸び放題になっていないか心配だ…」
「小田原の空き家、ご近所から苦情が来たらどうしよう…」

湘南・県西部エリアに空き家を所有する、特に遠方にお住まいの方から、こうした「ご近所トラブル」に関するご相談が急増しています。

税金の問題と並んで、所有者様の頭を悩ませるこの問題。実は2023年4月の法改正で、所有者の責任がこれまで以上に重くなっていることをご存知でしょうか。

この記事では、「知らなかった」では済まされない空き家管理の法的リスクと、ご近所トラブルが「固定資産税6倍」という最悪の事態に直結する流れ、そして今すぐできる具体的な回避策を徹底解説します。

衝撃の事実:2023年「民法改正」で何が変わったか?

空き家トラブルで最も多い「庭木の越境問題」。これまで、隣の家の木の枝が自分の敷地に入ってきても、勝手に切ることはできず、所有者に「切ってください」とお願いするしかありませんでした。

しかし、2023年4月に施行された改正民法(第233条)により、ルールは大きく変わりました。

以下の3つのケースに該当する場合、隣地の所有者が、越境した木の枝を自ら切り取れるようになったのです。

  1. 木の所有者に「枝を切ってほしい」と催告したのに、相当の期間内に切らない場合。
  2. 木の所有者を知ることができない、またはその所在を知ることができない場合。
  3. 急迫の事情がある場合(例:台風で枝が折れかかり、今にも隣家に被害を及ぼしそうな場合)。

これは、空き家所有者にとって非常に重大な変更です。「所有者と連絡が取れない」(上記2)や「台風で危険だ」(上記3)と判断されれば、所有者の許可なく枝が切られ、その費用を請求される可能性も出てきました。

あなたの空き家管理、もはや「そのうちやろう」では済まされない時代になったのです。

実例:湘南・県西エリアで実際に多い「空き家トラブルTOP3」

法改正の背景にもあるように、空き家に関するトラブルは深刻化しています。湘南・県西部エリアで特に多いご相談実例をご紹介します。

第1位:樹木・雑草問題(景観悪化・害虫発生)

最も多いのが、前述の越境問題です。伸び放題の雑草や庭木は、地域の景観を損ねるだけでなく、毛虫やハチ、蚊などの害虫の発生源となります。「庭がジャングル状態で、洗濯物が干せない」といった切実な苦情が、トラブルの発端となります。

第2位:害虫・害獣問題(スズメバチ・ネズミ)

人が住まなくなった家は、動物にとって格好の棲み処です。特に多いのが、軒下や通気口への「スズメバチの巣」の発生。近隣住民にとって命の危険に直結するため、最も緊急性の高いトラブルの一つです。また、ネズミやハクビシンが屋根裏に住み着き、騒音や悪臭の原因となるケースも後を絶ちません。

第3位:防犯・安全問題(不法侵入・倒壊リスク)

割れた窓ガラスや壊れたフェンスを放置していると、不法侵入や不法投棄、放火などの犯罪を誘発する温床となります。また、台風の多い湘南エリアでは、トタン屋根やブロック塀が強風で飛ばされ、隣家や通行人に被害を及ぼすリスクも常に付きまといます。

トラブルが「固定資産税6倍」に直結する恐ろしい流れ

「ご近所トラブルは、あくまで当事者間の問題」そう考えてはいけません。これらのトラブルは、最終的に「固定資産税が最大6倍になる」という行政処分に直結します。

その流れはこうです。

  1. 近隣住民が市役所に通報
    「木の枝が越境している」「ハチの巣ができて危険」といった苦情が、自治体の窓口(藤沢市や小田原市などの建築指導課や空き家対策課)に寄せられます。
  2. 行政による現地調査
    通報を受け、職員が現地を調査。「このまま放置すれば危険だ」と判断されます。
  3. 「管理不全空き家」の認定
    2023年の法改正で新設されたこの制度により、危険度が比較的低い段階でも行政が介入できるようになりました。
  4. 改善の「勧告」
    行政から「〇月〇日までに、庭木を剪定してください」といった「指導」や「勧告」が所有者(あなた)に届きます。
  5. 【最重要】「勧告」に従わないと、固定資産税の優遇が解除!
    正当な理由なくこの「勧告」に従わない場合、空き家が建っている土地の「住宅用地の特例」が解除されます。これにより、土地の固定資産税が最大6倍に跳ね上がるのです。

つまり、「ご近所の苦情」は、あなたの資産を直撃する金銭的問題の引き金(トリガー)そのものなのです。

今すぐできる、最強のトラブル回避術

では、どうすればこれらの最悪の事態を避けられるのでしょうか。答えはシンプルです。

1. 基本の「き」:最初の挨拶と連絡先の明示

もしあなたが相続したばかりなら、まず一度、ご近所(最低でも両隣とお向かい)に挨拶に伺いましょう。「この度、家を相続しました〇〇です。遠方におりご迷惑をおかけするかもしれませんが、何かあればこちらにご連絡ください」と、あなたの連絡先や管理会社の連絡先を明記したカードを渡しておくだけで、信頼関係は全く変わります。 問題が起きた時、近隣の方が市役所ではなく、まずあなたに直接連絡をくれるようになれば、行政処分に発展するリスクは劇的に下がります。

2. プロの活用:管理代行サービス

「月1回も湘南に通うのは無理だ…」という方が大半でしょう。その場合は、プロの力を借りるのが賢明です。 地元のシルバー人材センターなどに依頼すれば、月額数千円程度で、通気・通水・庭の目視確認などを行ってくれるサービスがあります。

3. 根本解決:専門家への相談

毎月の管理費すら負担に感じる場合、あるいは管理の手間から解放されたい場合は、空き家を「持ち続ける」前提を一度リセットしましょう。

「売却」や「賃貸」、あるいは「解体」など、根本的な解決策を検討するタイミングです。

「うちの家が売れるわけない」と思い込まず、まずはWebで調べてみたり、わからなければ専門家に相談するのがおすすめです。私たちは湘南エリアの不動産事情に詳しいあなたの状況に合わせた最適な「出口戦略」(売却、賃貸、管理など)を一緒に考えさせていただきます。必要であればお問い合わせまでご連絡ください。

まとめ:管理責任は、もはや先送りできない

2023年の民法改正により、空き家所有者の「管理責任」は、法的に一層重いものとなりました。「ご近所トラブル」は、単なる感情的な問題ではなく、あなたの資産を失いかねない法務・税務の問題です。

しかし、リスクが明確になったということは、対策も明確になったということです。

今すぐできる最小限のアクション(近隣への連絡先明示)から始め、中長期的には専門家の力も借りながら、管理の手間やコストから解放される「根本的な解決」を目指しましょう。