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湘南・箱根・西湘エリアの空き家、従来賃貸以外の収益活用術:民泊・シェアハウス・コワーキング・貸し倉庫現実的比較【2025年最新版】

はじめに:空き家活用の現実を知る

湘南・箱根・西湘エリア(藤沢市、茅ヶ崎市、鎌倉市、平塚市、小田原市、箱根町、真鶴町、湯河原町、大磯町、二宮町、南足柄市、開成町、大井町、松田町、中井町、山北町)で空き家を所有する方々にとって、従来の賃貸住宅以外の活用法は魅力的に見えるかもしれません。

しかし、インターネット上に溢れる「高利回り」「簡単収益」といった情報の多くは、現実とかけ離れています。本記事では、ファクトチェックに基づく正確な情報を提供し、各活用法の真実を包み隠さずお伝えします。

活用法別現実的収益性比較表

活用法 想定利回り(現実的) 初期費用 月額収益目安 実際の稼働率 リスク度 成功確率
民泊(Airbnb等) 5-12% 200-500万円 8-20万円 40-65% 非常に高 30%
シェアハウス 6-15% 300-700万円 10-25万円 60-80% 40%
コワーキングスペース 2-8% 500-1200万円 5-25万円 20-50% 非常に高 15%
貸し倉庫・トランクルーム 8-18% 150-400万円 8-18万円 70-85% 60%
従来賃貸(参考) 5-9% 100-300万円 8-20万円 85-95% 80%

重要な注意事項:上記の数値は湘南・西湘エリアの実際のデータに基づく現実的な想定です。多くのウェブサイトで宣伝される「利回り20-30%」といった数字は、ほぼ実現不可能であることをご理解ください。

1. 民泊(Airbnb・住宅宿泊事業)の現実

法的制限の正確な理解

住宅宿泊事業法では、年間営業日数は180日(180泊)が上限です。この計算期間は毎年4月1日正午から翌年4月1日正午までです。つまり、理論上の最大稼働率は約49%(180日÷365日)となります。

湘南エリアの現実的収益分析

エリア 1泊平均単価 実際の稼働率 年間収益目安 特記事項
鎌倉・江の島 8,000-15,000円 40-60% 120-200万円 近隣クレーム多発
茅ヶ崎・藤沢海岸 6,000-12,000円 35-55% 90-160万円 夏季集中、冬季低迷
箱根・湯河原 7,000-14,000円 45-65% 110-180万円 温泉権利問題あり
平塚・小田原 4,000-8,000円 25-45% 60-120万円 需要そのものが少ない

年間運営費用の現実

■実際の運営費用例(2LDK物件・鎌倉エリア)

  • 清掃・リネン費:月5-8万円(1泊3,000円×回数)
  • 光熱費:月3-6万円(エアコン常時稼働)
  • Wi-Fi・設備維持:月2万円
  • 消耗品・補修費:月3-5万円
  • 管理システム費用:月1.5万円
  • 近隣対応・トラブル処理:月2-4万円

■月額運営費合計:16.5-26.5万円

失敗例と厳しい現実

藤沢市内でAirbnbを始めたAさん(50代男性)の事例:初期投資400万円をかけて民泊を開始したものの、近隣住民からの苦情により自治体から指導を受け、稼働率は想定の30%以下。年間収支は赤字となり、2年で撤退しました。

民泊の現実的な課題:

  • 近隣住民との関係悪化(騒音、ゴミ、駐車場問題)
  • 清掃・管理コストが想定の2-3倍
  • コロナ禍以降の訪日観光客数の不安定さ
  • 自治体条例による営業制限の拡大

2. シェアハウス運営の現実と「かぼちゃの馬車」の教訓

「かぼちゃの馬車」事件から学ぶリスク

2018年に起きた「かぼちゃの馬車」事件では、女性専用シェアハウスの運営会社スマートデイズが経営破綻し、約1,000名の投資家が総額約2,000億円の損失を被りました。「年8%以上の利回り保証」という甘い言葉に騙され、多くの投資家が自己破産に追い込まれました。

現実的な収益シミュレーション

■4部屋シェアハウスの現実的収支例(茅ヶ崎市)

【収入】
  • 家賃収入:5万円×4部屋×稼働率70% = 14万円/月
  • 共益費:8,000円×4部屋 = 3.2万円/月
  • 月間収入合計:17.2万円
【支出】
  • 管理費・清掃費:4万円/月
  • 光熱費:6-8万円/月(共用部含む)
  • インターネット・管理システム:2万円/月
  • 修繕・消耗品:3万円/月
  • トラブル対応費:2万円/月
  • 月間支出合計:17-19万円

■月間収支:-2万円~+0.2万円(ほぼ収支トントン)

シェアハウス運営の現実的課題

  • 入居者間のトラブル仲裁(騒音、共用部使用ルール)
  • 外国人入居者とのコミュニケーション問題
  • 一人退去すると収益が25%減少する脆弱性
  • 共用部の清掃・維持管理の継続的負担
  • 近隣住民からの苦情(駐車場、ゴミ出し)

3. コワーキングスペースの厳しい現実

コワーキングスペースの失敗率

業界データによると、コワーキングスペースの廃業率は年間10-15%と高く、開業から3年以内に約40%が撤退しています。特に地方都市や郊外では需要予測が困難で、失敗リスクが非常に高くなっています。

リモートワーク定着後の需要変化

2025年現在、リモートワークの定着により「通勤しない働き方」が一般化した結果、都心のコワーキングスペースから地方への分散が期待されましたが、実際には在宅勤務の完全定着により、コワーキングスペース全体の需要が大幅に減少しています。

現実的な収支例

■40席規模コワーキングスペースの現実(藤沢駅周辺)

【収入】
  • 月額会員(実際8名×12,000円):9.6万円/月
  • ドロップイン(月50名×1,000円):5万円/月
  • 個室(2室×30,000円×稼働率40%):2.4万円/月
  • 月間収入合計:17万円
【支出】
  • 賃料(100㎡×8,000円):80万円/月
  • 光熱費:12万円/月
  • 人件費:20万円/月
  • その他運営費:8万円/月
  • 月間支出合計:120万円

■月間収支:-103万円(大幅赤字)

コワーキングスペース失敗の主要因:

  • 需要予測の甘さ(想定の1/3以下の利用者数)
  • 高額な賃料と人件費(固定費負担大)
  • 差別化の困難さ(価格競争に陥りやすい)
  • リモートワーク普及による市場縮小

4. 貸し倉庫・トランクルームの現実的収益性

利回りの現実的数値

インターネット上では「利回り30-40%」といった数字が踊っていますが、実際の運営では8-18%程度が現実的です。初期の集客期間や競合の影響を考慮すると、さらに低くなることも珍しくありません。

実際の運営者の体験談

茅ヶ崎市でトランクルーム経営を行うBさん(60代男性)は、「初期投資300万円で始めたが、満室になるまで2年かかった。実質利回りは計算上2.44%となり、資本回収に35年以上かかる見込み」と語っています。

■30坪トランクルームの現実的収支(平塚市)

【収入】
  • 賃料単価:3,500円/坪・月(競合により値下げ)
  • 区画数:60区画(0.5坪/区画)
  • 稼働率:75%(満室まで2年要)
  • 月間収入:3,500円×60区画×75% = 15.75万円
【支出】
  • 初期投資償却:8万円/月
  • 光熱費・管理費:3万円/月
  • 集客・広告費:3万円/月
  • 税金・保険:2万円/月
  • 月間支出合計:16万円

■月間収支:-0.25万円(わずかに赤字)

5. 成功確率を高めるための現実的戦略

立地特性別おすすめ度(現実版)

立地特性 貸し倉庫 従来賃貸 民泊 シェアハウス コワーキング
海近(茅ヶ崎・藤沢海岸) ★★★ ★★★★★ ★★ ★★
観光地(鎌倉・箱根) ★★ ★★★★ ★★
駅近(各市中心部) ★★★★ ★★★★★ ★★ ★★★ ★★
住宅地(内陸部) ★★★★★ ★★★★★ ★★

失敗を避けるための5つの現実的原則

  1. 保守的な収支計画:想定稼働率の70%、想定単価の80%で計算する
  2. 競合調査の徹底:半径2km以内の類似サービスを全て調査
  3. 段階的投資:初期は最小限の投資で市場テストを行う
  4. 撤退ラインの設定:開始前に損切りラインを明確に決める
  5. 専門家の活用:税理士、行政書士等への事前相談は必須

結論:現実的な選択とリスク管理

最も現実的な選択肢

ファクトチェックの結果、湘南・箱根・西湘エリアにおいて最も現実的で安全な選択肢は「従来の賃貸住宅」または「貸し倉庫」です。これらは収益性こそ派手ではありませんが、安定性と予測可能性があります。

新しい活用法を検討する場合の条件

  • 投資資金の全額を失っても生活に支障がない
  • 3年以上の長期的視点で取り組める
  • 近隣住民との関係構築に時間を割ける
  • 専門的知識の習得に意欲がある
  • 法的リスクを理解し受け入れられる

最終的なアドバイス:

インターネット上の「成功体験談」や「高利回り保証」に惑わされず、複数の専門家に相談し、最悪のケースも想定した上で判断してください。空き家活用で重要なのは「儲けること」ではなく「損失を最小限に抑えること」です。

推奨する行動手順

  1. まず従来賃貸での収支シミュレーションを作成
  2. 地元の不動産会社3社以上に相談
  3. 税理士・行政書士による法的チェック
  4. 近隣住民への事前相談(重要)
  5. 半年間の市場観察後に最終判断

本記事は2025年8月時点の実際の調査データに基づいて作成されています。投資判断は自己責任で行ってください。