- コラム
湘南エリアで増える“相続空き家”の問題と対策
湘南地域では、近年「相続空き家」の問題が顕在化しています。高齢化の進行に伴い、親世代が所有していた住宅を子世代が相続するケースが急増。その結果、居住予定のない空き家が放置され、地域の景観や治安、防災面での課題を生んでいます。本記事では、湘南エリアにおける相続空き家の実態、放置によるリスク、相続登記義務化といった法制度の変化、さらに売却・利活用の具体的な対策について詳しく解説します。
なぜ湘南エリアで相続空き家が増えているのか
湘南エリア(藤沢市、茅ヶ崎市、平塚市、小田原市、鎌倉市、箱根町、湯河原町、真鶴町、南足柄市、二宮町、大磯町など)は、かつては首都圏近郊のベッドタウンや観光地として栄え、住宅需要も高かった地域です。しかし、少子高齢化と都市部への人口流出が進む中、家を継ぐ人がいないまま親世代が亡くなり、空き家が残されるケースが増えています。
特に沿岸部では、古くからの戸建て住宅が密集している地域もあり、相続後の活用方法が見出せないまま放置されている物件も少なくありません。
相続空き家を放置するリスクとは
相続した空き家を放置することには、経済的・社会的にさまざまなリスクが伴います。
- 固定資産税の負担:居住実態がなくても、不動産を所有していれば毎年固定資産税が課税されます。空き家状態が続き、行政から「特定空き家」に認定されると、通常の住宅用地に適用される軽減措置(6分の1)が受けられなくなり、税額が最大で6倍になる場合があります。
- 老朽化による倒壊リスク:人が住まなくなった家屋は急速に劣化が進みます。屋根の破損、外壁の崩落、白アリ被害など、放置すればするほど修繕費も膨らみます。地震や台風などの災害時に倒壊し、近隣に被害を及ぼすリスクも高まります。
- 治安・景観の悪化:空き家は不法侵入の対象となりやすく、空き巣や放火のリスクが高まります。また、庭の雑草が伸び放題となったり、外観が荒れることで、地域全体の景観価値を損なう原因にもなります。
- 近隣トラブルの元に:空き家から害虫が発生したり、枯れた木が隣家へ倒れるなど、近隣に迷惑をかける要因になりやすく、苦情や損害賠償問題に発展することもあります。
これらのリスクは、時間の経過とともに増大し、放置すればするほど「負動産」として家族に重くのしかかってきます。早めの対応が重要です。
2024年からの相続登記義務化とは
2024年4月から、不動産を相続した際の相続登記が義務化されました。これは、「所有者不明土地問題」への対応として制定された改正不動産登記法の一環です。具体的には、相続開始と不動産の取得を知った日から3年以内に登記申請を行わなければならず、正当な理由なく放置した場合には10万円以下の過料が科される可能性があります。
従来、相続登記は任意であり、費用や手続きの煩雑さから先送りされるケースが多くありました。その結果、相続人が複数世代にわたり増え続けてしまい、話し合いも困難になり、売却や活用が不可能な「塩漬け不動産」と化してしまう例も後を絶ちません。
湘南エリアにおいても、人気観光地や海沿いの住宅地など、相続未登記のまま放置された空き家が数多く存在しています。法改正を機に、所有者責任が明確化されたことで、相続人にとっては「知らなかった」では済まされない時代に突入しました。今後は、所有者不明や登記未了の空き家に対して行政が直接介入する事例も増えると予想され、早期の手続きが求められます。
相続空き家の対策①:売却
最も現実的な対策の一つが「売却」です。湘南エリアは都市部からのアクセスが良く、観光地や自然豊かな環境も整っているため、需要のあるエリアも多くあります。
高く売るためのポイント
- 事前の整理・清掃:不要物の撤去や簡単なリフォームで印象アップ。空き家は第一印象が重要です。
- 現地調査と相場把握:複数業者から査定を取り、価格の適正感を確認。地元業者に強みがあります。
- 地域特性を活かす:海に近い・観光地近くなどの魅力を強調。特に藤沢市、茅ヶ崎市、平塚市などは、セカンドハウスや移住希望者のニーズが安定しています。
相続空き家の対策②:利活用
すぐに売却できない場合は、「貸す」「使う」などの利活用を検討するのも一案です。賃貸に出すことで家賃収入を得られ、維持管理の負担を軽減できます。
具体的な活用方法
- 賃貸住宅として活用:戸建て賃貸はファミリー層に人気。近年はペット可・駐車場付きの需要も高いです。
- シェアハウス・民泊:観光需要のある地域では、空き家の活用方法として注目。箱根町や湯河原町では訪日客向けの民泊が成功例として報告されています。
- 店舗・事務所用途:立地によってはカフェやオフィスへの転用も有効。藤沢市や茅ヶ崎市では、古民家をリノベーションした雑貨店・カフェなどの事例も見られます。
相続空き家の対策③:信託や共有整理
空き家を複数人で相続した場合、共有状態のままでは売却・活用が難しいケースも多くあります。このような場合は、以下のような対策を講じることが必要です。
- 家族信託:信頼できる家族に物件管理を任せることで、認知症リスクや手続き停滞を回避しながら円滑な処分が可能です。
- 持分買取:相続人間で話し合い、金銭で持分を買い取ることで単独所有にまとめ、活用の自由度を高めます。
- 遺産分割協議の見直し:公平な分配を再検討し、話し合いによる合意形成を図る。専門家の仲介により、トラブルを避けることが可能です。
空き家相談は専門家に任せよう
相続と不動産が絡む問題は、税務・法務・実務の知識が求められる複雑な分野です。放置してしまう前に、司法書士や不動産業者、空き家相談の専門窓口などに相談することで、トラブルを回避し、最適な選択肢を見つけることができます。
湘南空き家バンクでは、湘南地域に特化した不動産・相続の専門家と連携し、空き家の相談から売却・活用までを一貫してサポートしています。
まとめ|相続空き家を「負動産」から「資産」へ
相続によって空き家を持つことになった場合、最も避けるべきは「放置」です。湘南という立地の魅力を最大限に活かし、売却や活用、家族間での整理など早めに対処することで、不要な負担を減らし、資産として再活用することが可能です。
湘南空き家バンクでは、空き家をめぐる法改正や地域の相場動向、売却・活用事例なども随時ご案内しております。ぜひお気軽にご相談ください。